意訳:どんなつらいことがあっても、明日は必ずくる。希望をもって生きよう。
1939年
『風と共に去りぬ』は、ヒロイン役スカーレット・オハラの冒頭のセリフで幕を閉じます。
彼女はとても激しい気性をもっていて、意のままに人を振り回したり、結局は自分自身が傷ついたり…。
それでも彼女は、
どんなことがあっても、力強く生きる
ちょっと弱気な一面も見せた彼女のエンディングの言葉は、ものすごく印象に残るものとなっています。
2020年春
映画史に残る不朽の名作は違った形で批判を集めることになりました。
問題視された原因は、
・南北戦争以前の南部を賛美した演出
※当時、奴隷制度に「否定的」な北部と「肯定的」な南部で内戦状態となっていた
と言われています。
今日は、「映画ファンとして、この問題をどのように受け止めるのか!?」皆さんに問うてみたいです。
それでは、この問題の背景から確認してみましょう!
『風と共に去りぬ』米で一時配信停止
アカデミー賞で作品賞などを総なめにした一方、黒人への差別的描写や奴隷制の肯定など長年物議を醸してきた映画『風と共に去りぬ』が、米動画配信サービス「HBO Max」で一時配信停止となりました。
ジョン・リドリー氏の意見記事
オスカー受賞歴のある黒人脚本家の同氏はL.A. Timesに、HBO Maxを名指しして意見記事を書いたことから、HBO Maxは同作品の削除に踏み切ったようです。
白人警官の暴行事件
白人警官の暴行で黒人男性ジョージ・フロイドさんが死亡した事件を受け、各地で人種差別への抗議デモが行われています。これも配信停止の判断を後押ししたことは間違いないでしょう。
HBO Maxは配信停止へ
同社曰く、
「作品には、根深く残る民族や人種に対する差別が描写されている」
「こうした人種差別の描写はいかなる時においても正当化できるものではない」
などとし、本作品をストリーミング配信のコンテンツから削除しました。
配信再開の条件
HBO Maxの配信停止措置は、あくまで一時的なもので、今後、作品の歴史的な背景や差別表現への批判などの注意事項を加えた上で、配信を再開するとしています。
人種差別表現をめぐる時代背景
時代背景
作品が公開された1939年よりもさらにさかのぼること40数年、1861~65年、アメリカ合衆国の北部と南部の間で内戦がありました。
黒人奴隷制度の存続が主な争点でしたが、北軍の勝利により奴隷解放宣言が発布されました。

作品についてもみていきましょう!
作品の舞台
南北戦争の最中で奴隷制が1860年代のアメリカ南部・ジョージア州。あくまで南部白人の視点で描かれていて、黒人からは「奴隷制度の残酷さを無視していて、主人公のヒロインのような立場(白人農園主)を美化している」と、根強い批判があります。

何も知らない人が見たら、奴隷制度に違和感を感じないかもしれない。
もう一つの舞台裏
本作品では、召使い役のマミー(ハティ・マクダニエル)が黒人女優として初めてオスカー(アカデミー助演女優賞)を受賞しましたが、彼女は共演者と同じテーブルに座ることを許されませんでした。
会場に使われていたアンバサダー・ホテルは「黒人お断り」で、オスカー像を置いておくための裏部屋への入室を許されたような始末でした。

映画のあらすじ(ネタバレ注意)
画像参照元 : Amazon
大農場主の娘スカーレットは、アシュレーのことを心底愛しているが、彼は従妹メラニーと結婚することに…。
負けん気の強いスカーレットはあてつけで、メラニーの兄と結婚します。しかし彼はすぐに始まった戦争で戦死、今度は妹の婚約者を横どりして結婚するが彼も亡くなってしまいます。
そんな彼女は、自分とどこか似た雰囲気のあるレットの強引ともいえる愛情にふれて結婚。しかし、レットは彼女がまだアシュレーを愛していることに気づき、いつしか二人はすれ違っていきます。
レットが彼女の前から去った時、初めてスカーレットはレットを愛していることに気付くが……。

まとめ
作品の演出の中には、確かに白人にとって都合のいいものであり、作品としては大傑作だと称えられた時代がありました。
僕は、今になってこういった問題がクローズアップされるのはむしろ良い事だと思っています。今まで黙殺されてきた、黒人たちの不快な思いがこうやって議論を巻き起こし、不朽の名作であろうと悪いものは悪いと言える社会になりつつあるのだと受け取っています。
こういった事情を知ったうえで作品を改めて見てみるのは意義のあることだと思っています。
『風と共に去りぬ』の価値を見直すことで、過去の痛みを知り、そして成熟していく社会を実感できることでしょう。
激情のスカーレットを目線を通して、あなたもその独特な世界に引き込まれてみませんか?