2017年に公開された「スパイダーマン:ホームカミング」は、スパイダーマンがマーベル・シネマティック・ユニバースで主役となったビックタイトルです。
サム・ライミ版「スパイダーマン1・2・3」からリブートされた「アメイジング・スパイダーマン」。
そして、ついにソニー・ピクチャーズとマーベル・スタジオがパートナーシップを結び、アイアンマンを始めとするたくさんのヒーローたちと同じ世界に生きる「スパイダーマン:ホームカミング」として再リブートされたのです。
今回紹介する「スパイダーマン:ホームカミング」で、スパイダーマンとして活躍しているピーター・パーカーは15歳の少年。僕たちの思い描く完全無欠のヒーロー像とは少しずれています。
そんなピーターが人間として成長し、ヒーローとしてみんなに認められるようになるには数々の困難を乗り越えていかなくてはなりません。
悩める少年としてのピーターを心配し、実の親のように見守る叔母のメイ。
ヒーローとしての自覚を促す指導者としてのトニー・スターク=アイアンマン。
この二人を主軸に、「スパイダーマン:ホームカミング」の魅力に迫ります。
「スパイダーマン:ホームカミング」の簡単なあらすじと注目ポイント
普段は15歳の高校生としてスクールライフを満喫しているピーター・パーカーは、実はスパイダーマンとして活動しています。
その様子を動画サイトにアップするなど、僕たちの知るヒーロー像とはちょっと違いますが、ある意味とてもリアリティのある15歳。
そんな彼の目下の目標はアベンジャーズの仲間として認められ、一人前のヒーローになることです。
憧れのヒーロー、アイアンマンであるトニー・スタークから貰った特製スーツに身を包みニューヨークの街を守るため日夜パトロールに励みます。
また、高校生として友情を育み、気になる女の子との関係にウキウキするような青春も瑞々しく描かれていて、ピーターがヒーローとして成長するまでの葛藤だけがクローズアップされているわけではありません。
一人の高校生とヒーロー。二つの顔を持つピーター・パーカーの成長も注目ポイントです。
もちろん圧倒的なスケールのアクションや新たな敵(ヴィラン)・バルチャーのビジュアルなど見所は盛りだくさんです。
「スパイダーマン:ホームカミング」をアクションだけの映画にしなかった名脇役メイとアイアンマン/トニー・スターク
いくらヒーローとはいえ、多感な15歳の少年であるピーターはなんでも完璧にこなせるわけではありません。
そんな彼を支える叔母のメイ・パーカー。
ヒーローとしての師であるトニー・スターク。
主役であるピーターを支え成長させる「大人たち」に注目してみましょう。
メイ・パーカー
メイ・パーカーはスパイダーマンであるピーター・パーカーの叔母さんです。
ピーターの育ての親でもあり、実の子どものような愛情を彼に注いでいます。
夫を亡くしているメイに対してピーターはいつも気にかけ、ヒーローとしての活動で心配をかけないように振舞っています。
一方でメイ自身はピーターがトニー・スタークの下で始めたインターン(という名目のヒーローとしての活動)が過酷なこともあり、とても心配します。
実はメイ叔母さんに関しては、「スパイダーマン:ホームカミング」で大胆な変更がなされました。
これまでの映画シリーズではおばあちゃんとも呼べそうな年齢でしたが、本作からはセクシーな大人の女性となって登場します。
この変更に多くのファンが驚き、賛否両論となりましたが、今では多くのファンに受け入れられました。
アイアンマン/トニー・スターク
映画「アイアンマン」シリーズだけでなく、「アベンジャーズ」シリーズで中心的な人物がアイアンマン/トニー・スタークです。
実業家にして天才発明家というハイスペックなヒーローですが、「スパイダーマン:ホームカミング」では幾多の戦いを経験したヒーローとしてさらに風格を漂わせています。
ピーターの憧れのヒーローであり、彼にハイテクスーツを与えています。スーツには補助輪モードだけでなく、様々な機能があり、しっかりサポートしています。
本作でトニーはピーターの指導者として、時に厳しい言葉をぶつけます。それはヒーローとして責任や覚悟を問うものであり、トニー自身の大きな成長が過去の作品であったからこそ生まれたものでしょう。だからこそピーターの心に響き、彼の成長のきっかけの一つとなったはずです。
また、本作でトニーとピーターは父親と息子のような関係も見せます。
ピーターがトニーに亡き父親を見出し、もう一方でトニーは自分と父親との関係を当てはめていました。
そういった二人の関係性は、トニーの「私を超えるんだ」というセリフに象徴的に表れているように思えます。
「スパイダーマン:ホームカミング」と他の「スパイダーマン」シリーズとの違い
出典:Amazon
映画「スパイダーマン」は今回紹介している「スパイダーマン:ホームカミング」以前に5作品公開されています。
2002年に公開された「スパイダーマン」から続くナンバリングタイトルである「スパイダーマン2・3」はサム・ライミ監督のシリーズ。
そして、リブートされた「アメイジング・スパイダーマン」と続編である2は、マーク・ウェブ監督の作品です。
今回紹介している「スパイダーマン:ホームカミング」はジョン・ワッツ監督。
実はすべてのシリーズでは舞台となる世界が違います。
並行世界(パラレルワールド)というよく似ていながら、ちょっとずつ違いのある世界という扱いになっています。
特に「スパイダーマン:ホームカミング」はマーベル・シネマティック・ユニバース(MUC)というマーベル・コミックのキャラクターたちが大勢登場する大きな枠組みの中の一つという位置づけになっています。
そういった理由で、以前の「スパイダーマン」シリーズとの違いも、そもそも別の世界であるという解釈のもと許容されているのです。
「スパイダーマン:ホームカミング」で鮮烈に描かれたヒーロー像
「スパイダーマン:ホームカミング」は単純にヒーローが悪役を倒すだけの物語ではありません。
15歳という若くて、未熟な部分もある少年が、憧れのヒーローに認められ、ヒーローとしても人間としても成長していくという部分にこそ面白さが凝縮されているのではないでしょうか。
だからこそ、孤独に戦うヒーロー「親愛なる隣人」スパイダーマンが、憧れのヒーローと出会う15歳の少年という形で鮮烈に印象に残るのでしょう。