スティーブン・スピルバーグ監督は数多くの作品を作り上げていますが、その中で「戦火の馬」という作品はご存知ですか?
今回はその「戦火の馬」に関してご紹介します!
「戦火の馬」の原作とは?
この「戦火の馬」には原作があります。
1982年に出版され、マイケル・モーパーゴさんが書いた児童小説「戦火の馬」が基になっています。
マイケル・モーパーゴさんはイギリス出身の児童文学小説家です。
原作秘話①
マイケル・モーパーゴさんは、当時住んでいたイングランドのイズリーという村で、3人の第一次世界大戦の退役軍人と出会いました。
1人目は自作農民として馬として働き、パブで酔っ払っていたというウィルフレッド・エリス。
2人目は騎兵隊に属していた、他の村民のバジェット大尉。
3人目は軍が村に軍需用の馬を買い付けに来ていたことを覚えていたアルバートウィークス。
この3人から大戦における人間と動物の生命の喪失について話を聞いたことで、小説の題材が明確になったといいます。
戦争と一言で聞くと人間と人間の闘いと思うかもしれませんが、そこには人や物を運ぶために失われた動物たちがいるのです。
マイケルさんは、イギリスだけでも100万頭以上の馬が死んだことを研究で知ることができたのです。
イギリスから戦地に送られた馬100万頭のうち帰ってきたのはわずか6万2000頭でした。
帰ってこられなかった馬は、戦死か食肉として兵士たちに食べられたそうです。
原作秘話②
マイケルさんは奥さんと共に、市内の子どもたちが地元の農家に1週間泊まり農業体験をする、NPO団体を立ち上げました。
その際のお話です。
ある少年は吃音症であり、うまく人と話をすることが出来なかったそうです。
教師たちもいきなり少年に話しかけておびえさせてしまうので、あまり話しかけないようにと伝えていました。
農業体験最後の夜、少年は馬小屋の前で話をしていました。
馬相手に何度も何度も話をし、馬も頭をもたげて少年の話を聞いていたそうです。
マイケルさんは馬と少年との間に親密な信頼関係が築かれていると非常に感動し、「戦火の馬」を馬目線、馬の気持ちで描こうと決めたそうです。
「戦火の馬」原作あらすじ
主人公はアルバートという少年と馬のジョーイ。
第一次世界大戦前、アルバートの父テッド・ナラコットが若い馬を購入してきました。息子のアルバートはその馬をジョーイと名付けて世話をし始めました。日々、世話をしていく中でアルバートとジョーイは強い絆と信頼関係で結ばれていきます。
テッドはアルバートが止める前に金と引き換えにジョーイを軍隊へ売ってしまいます。借金返済のためです。
アルバートはすぐに軍隊へ入ると申し出ましたが、年齢が若すぎるために軍隊に入れませんでした。アルバートはジョーイのために、年齢が入隊年齢になったらすぐに軍に入り、ジョーイを探しに行くと約束をしました。
そこからジョーイは想いもよらない運命に翻弄されていくのです。
ジョーイを軍隊で買ったジェームズ・ニコライ大尉によって借りるという名目でジョーイを譲りうけます。
そこでジョーイはトップソーンという馬と仲良くなりました。
ドイツ軍へ奇襲をしかけ、ジョーイとトップソーンはドイツ軍につかまってしまうのです。
やがて、ジョーイとトップソーンは野戦病院のそばのフランス農場で、少女エミリーとおじいさんとともに暮らすようになります。
2人と2頭は穏やかに日々を暮らしていきます。
しかし、戦争は足音を鳴らしながらやってきました。
ジョーイとトップソーンは再びドイツ軍で大砲をひかされるようになっていきます。
戦車の攻撃を受けて命からがら逃げてきたジョーイ。銃弾を避けるために戦地を走り抜けました。
途中で有刺鉄線に絡まってしまい動きが止まってしまいます。そこは戦場の中間地点だったのです。
ジョーイは死んでしまうのか、またジョーイが“奇跡の馬”と呼ばれるようになった理由、戦場の奇跡とは...。
もう涙なくしては読めません。
スピルバーグ監督の手で映画化
2007年に「War Horse~戦火の馬~」という名で舞台化。そして、2011年にスティーブン・スピルバーグ監督が映画化しました。
アカデミー賞作品賞等6部門にノミネートされ、メッセージ性の強い感動作となっています。
スピルバーグ監督の新たな代表作の1つと評されるようになりました。
原作では馬目線で描かれており、馬の心情等も描かれています。映画では、馬の目線や心情等の表現はなく、まくまでも人間目線で戦争によって翻弄されていく人間とジョーイの姿を描いています。
公開にあたりインタビューでスピルバーグ監督はこんなことを言っていました。
「観る人にリアリティを持たせるために(原作のように)ジョーイに話をさせないし考えさせないことを最初に決めました。」
映画では描かれなかった部分や印象的なセリフなどが原作の本には書かれているので、そっちもオススメ!
画像出典:Amazon
「戦火の馬」キャスト一覧(一部)
役名 | 俳優 | 日本語吹き替え声優 |
アルバート・ナラコット | ジェレミー・アーヴァイン | 新垣樽助 |
ローズ・ナラコット | エミリー・ワトソン | 佐々木優子 |
テッド・ナラコット | ピーター・マラン | 菅生隆之 |
エミリーの祖父 | ニエル・アレストリュプ | 小島敏彦 |
ジェームズ・ニコルズ大尉 | トム・ヒドルストン | 村治学 |
フリーソフト・ドリヒ | ニコラス・ブロ | 桜井敏治 |
エミリー | セリーヌ・バケンズ | 槙乃萌美 |
「戦火の馬」映画化のきっかけ
スティーブン・スピルバーグ監督は「戦火の馬」を映画化したことには、2つの理由があるといいます。
1つは末娘にどうしてもと言われて・・・・。
末娘は当時馬術に夢中だったそう。スピルバーグ監督自身も馬が大好きであったことと、娘にどうしてもとせがまれたそうです。
2つ目はイギリス軍とドイツ軍が有刺鉄線に絡まったジョーイを助けるシーンを深く描きたかったことです。
舞台版では少ししか描かれていない場面。監督自身強い印象を受け、もっと深く描こうとしたそうです。
実際に映画を観ても、このシーンは何気ないシーンに見えなくもないのですが、一見違うのは戦争中であること。
ジョーイを助ける兵士2人の会話が、とても日常あふれる普通であること。
ジョーイを助けている兵士2人は敵対しており、もしかしたらジョーイを助けた後に再び殺し合うかもしれないということなのです。
このシーンを見ていると「戦争って何なんだろう」と考えさせられます。
監督自身も印象にあるシーンということですが、僕自身もとても印象的な場面でした。
次に映画化に関して個人的に注目してほしい部分があります。
それは馬の演技力、美しさ。
原作だと想像するしかないですし、舞台版では作り物の馬で描かれています。
しかし、映画では、CGでもなく、作り物でもなく本物の馬が演技をしています。
その演技力に大注目してほしいです!
馬の中に人間でも入っているんじゃないの?実はCGなんじゃないの?と思ってしまうほど。ジョーイやその他の馬たちの心情は描いていないとスピルバーグ監督はインタビューで答えていましたが、観ている側に馬の心情を想像させてしまうほどの演技力なのです。
映画の中で様々なところを駆け抜けるシーンがあります。
草原、弾丸飛び交う戦地、死体の山・・・・その1つ1つの駆け抜ける時のジョーイの姿がとても美しいのです。
馬ってこんなに美しいんだと、映画を観ながら少し見とれてしまいます。
ラストシーン近く、ドイツ軍側の戦地から逃げ出し銃弾飛び交う戦地を駆け抜けるシーンは見ものです!
スピルバーグ監督作品「戦火の馬」まとめ
今回はスピルバーグ監督作品「戦火の馬」の原作と映画の紹介をさせていただきました。
第一次世界大戦が舞台なので、人によっては“戦争”というキーワードで抵抗感を抱く人もいるかもしれません。
戦争映画なので、銃撃シーンなどはありますが戦争のひどさ・すさまじさを伝えるというよりは人と人、人と馬、馬と馬といった“絆”の物語が描かれています。
子どもと観ても分かりやすい話になっています。
原作から読んで映画でも良し、映画から原作にいっても良し、どちらにしても感動間違いなしの作品です。
最後に「戦火の馬」が見られる動画配信サービスをご紹介します!
「戦火の馬」はParavi、U-NEXT、amazonプライム・ビデオ、TSUTAYA TVで視聴することが出来ます。(2020年7月現在)