今回はスティーヴン・スピルバーグ監督作品の中で「カラーパープル」という映画に関してご紹介していきます。
「カラーパープル」原作
まず、この「カラーパープル」という話はアフリカ系アメリカ人の作家である、アリス・ウォーカーさんによって書かれた小説です。
この「カラーパープル」はアリス・ウォーカーさんの作品の中でも代表作となっており、人種差別主義の白人文化だけではなく、家長主義の黒人文化、女性蔑視なども描かれており、そこから自分の流儀を貫いていく女性たちの物語になっています。
原作を読んだ多くの人々に大きな反響を残した作品でもあります。
この作品自体は、アリスさんの両親や祖父母の人生を参考につづられています。
出典:Amazon
「カラーパープル」あらすじ
物語は1909年から始まります。アメリカ南部の小さい家で14歳の少女セリーが、父親から性暴力を受けた影響で妊娠し子どもを出産します。
出産後すぐに子どもは父親に奪われ、売られてしまいます。悲しみの中でもセリーの心の支えとして、妹のネティがいました。
2人は共に支え合いながら、横暴な父親の元で奴隷同然に生きていました。
ある日、父親はセリーと同じぐらいの少女と再婚。その結婚式に来ていた男に妹のネティが狙われます。
その男の名前はミスター(本名はアルバート)。ミスターは正式にネティを嫁にと申し出ます。
「子どもの世話のためにネティを嫁にしたい。」
父親はその申し出を断り、代わりに姉であるセリーを嫁によこすのでした。
セリーは絶望の中、夫であるミスターの暴力と奴隷同然の扱いに耐えながら、日々を過ごしていきます。
ネティが父親の所から逃げてきた際は、セリーにとって心の支えであるネティがいることで一時の安らぎを覚えますが、それも長くは続きません。
とある出来事でミスターの怒りを買ったネティは追い出されてしまいます。
ネティが追い出された後も、セリーはミスターの暴力と奴隷扱いに耐えながら日々過ごしていました。
月日は過ぎ、ミスターのお気に入りの歌手であるシャグ・エブリーという女性が家に住み着くことになります。
このシャグとの出会いによって、セリーの虐げられている人生に彩りが生まれ、セリーの意識は変わっていくのでした。
「カラーパープル」実話:現在にも続く社会問題
この物語の舞台になっているアメリカ南部の1900年代前半。日本で言えば、日露戦争や伊藤博文が暗殺された時期に当たります。
アメリカの1900年代というと、人種差別を合法とするジム・クロウ法というのが出来た時代です。
これによって黒人が受けた被害例として、アメリカ南部の黒人には投票権がないとか、白人を当時の呼び名「サー」と呼ばなかったことによってビール瓶で殴られるなどが挙げられます。
黒人の命は軽いとされてきてしまった時代なのです。
映画の中では、こんな時代を生きる女性の1人として「ソフィア」という人物が登場します。
ソフィアはミスターの息子であるハーポの嫁。黒人だから、女性だからといって弱さを見せず、男たちにも屈しない強い女性です。
ある日、子どもと買い物をしていた際に、白人である市長婦人に子どもが目を付けられます。
可愛い子どもを奴隷として家に頂戴というのです。
それを拒否するソフィア。拒否したソフィアに対して「妻に何をしている!」と殴る夫である白人の市長。我が子を守るために、市長に殴りかかってしまったソフィアはその場で白人たちにののしられ、市民を守るための保安官に殴られそのまま刑務所に入ってしまうのでした。
刑務所に入って約8年。ようやく保釈されたソフィーは、白人の市長夫婦の元に奴隷として雇われていくのでした。
他にも家長主義である黒人文化によって、女性蔑視がありました。
そもそも、黒人であり女性であるということは、この当時立場としては弱いものだったのです。
才能がなければ、奴隷として働くしかない。そんなメッセージが含まれているように感じました。
主人公のセリーは父にも夫のミスターにも力で虐げられていたせいで、笑う時は口を手で隠すことが癖になっていました。
離れ離れになってしまった妹ネティからの手紙を受け取ることも出来ず、男性たちからは馬鹿にされていくのです。
他にもLGBTや女性が自立して生きるということ、性暴力など現代にも通じる社会問題がこの物語には詰まっています。
「カラーパープル」スティーヴン・スピルバーグが映画化へ
1985年にスティーヴン・スピルバーグ監督によって映画化されました。
スピルバーグ監督はこの物語を読んで、素晴らしさから作家のアリスさんに必死に売り込みをしたそうです。
当のアリスは、白人ビジネスに自分の作品が使われるのを嫌い映画化を拒否し続けたそうですが、スピルバーグ監督の熱意に押され映画化に至ったといいます。
この作品はアカデミー賞の中でも作品賞を含む10部門で候補に挙がりましたが、結果無冠で終わっています。
評価は高いのに賞レースには無縁だった背景には、アカデミー賞自体が黒人が主役の映画に対して消極的だったという理由や、スピルバーグ監督らしくない作品として拒否されたなどといった噂があるそうです。
映画の中ではブラックミュージックが多く使われています。
テーマとしては、人種差別や女性蔑視など少し重たい印象のあるものなので、映画自体も暗くなっているのかなと思いきや、ブラックミュージックのおかげで暗すぎず、明るいテンポに救われる時もあります。
また演出も少しクスっと笑ってしまうコメディタッチな部分もあるので、抵抗感なくみることが出来ると思います。
映画作品主要キャスト
役名 | キャスト |
セリー | ウーピー・ゴールドバーグ |
ミスター(アルバート) | ダニー・クローバー |
シャグ・エブリー | マーガレット・エブリー |
ソフィア | オプラ・ウィンフリー |
ネティ | アコーシア・ブシア |
ウーピー・ゴールドバーグ初の映画出演
ウーピー・ゴールドバーグといえばコメディエンヌとして、数々の賞にも輝いています。
「ゴースト/ニューヨークの恋人」や「天使にラブソングを」シリーズなどで有名です。
明るくて、面白い役どころが多い中、この「カラーパープル」で演じたセリーという役は暗く物静かで、今までウーピー・ゴールドバーグが演じた役とは真逆だと思います。
キャスティングはなんと、原作者であるアリスウォーカー本人が、サンフランシスコの舞台に立っていた姿を見てキャスティングに至りました。
これがなんと映画初出演!
初の映画出演とは思えないくらい繊細な演技をしています。
「カラーパープル」は闘い続ける女たちの物語
この映画では闘い続ける女性たちの姿がとても印象的でした。
セリーの周りの女性たちは差別や力に屈せず、闘い続けています。
妹のネティ、ソフィア、シャグの女性たちの姿が、セリーに生きる希望と愛されることの喜びを与えてくれます。
女性たちと出会ったことで、セリー自身も立ち上がる勇気を持っていくのでした。
その姿が印象的だったのが終盤にある家族との食事のシーンです。
セリーのシーンで印象的だった言葉を2つ紹介させてください。
「人にやったことは必ず自分に跳ね返ってくる」
「黒く、貧しく、醜いけど・・・私は生きている!生きている!」
この2つの言葉は、物語の中で問題になっていることに応えている表現なのではないでしょうか。
ぜひ、どのタイミングでどのシーンでこの言葉が出てくるのか、映画を観て確認してみてください!
スピルバーグ 監督作品『カラーパープル』は実話を基にした女の物語
この映画で描かれているテーマは、過去の話ではなく現在にも通じている話であり、もっと言うなら“アメリカという他国の話”ではなく、“日本でも同じことが言える”話になっていると思います。
最後、ミスターはボロボロになり、自分の行いを改めいいことをするようになります。
終始、男ってひどいという印象を持たせますが、ミスターの最後の行いで救われる男性もいるのではないかと思います。
なによりも悲惨な状況の中でも信頼できる友人と出会い、今の状況を必死に変えようとする女性たちの姿を見ていただきたいです。
この女性たちの姿に感動間違いなしです!
ぜひ、一度視聴してみることをお勧めします!改めて、現在見られる動画配信サービスをご紹介します!