日本でも絶賛公開中の『パラサイト 半地下の家族』という韓国映画をご存知でしょうか?
すごい記録ばっかり作っているので、あなたも名前ぐらいは聞いたことがあるかもしれませんね。
そう、今や飛ぶ鳥をも落とす勢いの名監督ポン・ジュノ氏の作品です。
この映画何がすごいって、まず第72回のカンヌ国際映画祭で韓国映画初となるパルムドール(最高賞)を受賞しました。
しかもそれだけじゃなく、続く世界最大の映画賞である「アカデミー賞」でも作品賞まで受賞してしまいました!
こちらも韓国映画初受賞ですが、なんと言っても英語以外の外国語映画としては、史上初の快挙!となりました。
もうここまで書いた時点で、どのくらいすごい映画なのかは想像がつくと思います。とにかく評判が良くて、映画館で見ておかないと損だという評論家もいるくらいの映画なので、観に行けるのであればぜひ、足を運ばれてみてはと思います。
今回はその「パラサイト」の話ではありませんが、それほどの映画を作るポン・ジュノ監督。気になりますよね?
ということでご紹介したいのが、もう10年前になりますが、2009年に公開されたポン・ジュノ監督の数ある名作の中から、『母なる証明』という作品について解説したいと思います。
主役の母親に”韓国の母”と言われる名女優のキム・へジャ、息子役にこの映画で5年ぶりに俳優に復帰したウォンビンが演じています。
この作品は、ポン・ジュノ監督の作品の中でも少し異彩を放っていますが、母親の行き過ぎた愛情を題材にした、狂気すら感じさせるなんとも切ないサスペンスです。
『母なる証明』のあらすじ
知的障害のある息子トジュン(ウォンビン)と二人暮しの母親(キム・へジャ)は、息子が可愛くて心配で仕方がありません。
夫を早々に亡くし、貧しいけれども一生懸命に育ててきました。
そんなある日、街中で女子高生が殺される事件が起きます。そしてその容疑者にトジュンが挙がってきました。事件現場にトジュンが持っていたゴルフボールが落ちていたからです。
事件が起きた時間にトジュンは泥酔しており、何も覚えていないので、アリバイはありませんが当然自分はやっていないと警察に無実を訴えます。
しかし警察は、知的障害を持つトジュンを誘導尋問にかけて、あっさりと自白させてしまいます。
トジュンの母親は、息子がそんな殺人なんて大それたことを出来るわけがないと、なけなしのお金をはたいて弁護士を雇います。でもその弁護士はやる気がなく、このままでは息子は有罪にされてしまうと確信します。
すると母親は、もう自分で無実を晴らすしか無いと立ち上がり、たった1人で真犯人を探し始めるのです。
なかなか真犯人にたどり着くことが出来ずにいたそんなある日、死んだ女子高生の携帯電話にそのカギがあることがわかり、無我夢中でその携帯電話を探しだします。
そしてその結末は・・・。
キャスト
・母親:キム・へジャ
・トジュン(息子):ウォンビン
・ジンテ:チン・グ
・ミナ:チョン・ウヒ
・チョン・ミソン:ミソン
・刑事:ユン・ジェムン
見どころ
【伏線が多い】
母親が野原で一人で踊っているシーンから始まるこの映画。
なんとも不思議でシュールな感じがしますが、後でその意味がわかるようになっていたり、この作品もそうですが、ポン・ジュノ監督の映画はいろんなところに伏線が張ってあるので、なんでもないようなシーンでも見逃すともったいないです。
「あ、そういうことか!」
っていうような気づきが多いのですが、それがまた面白さを倍増してくれます。
【感情移入しやすい】
この映画も、韓国映画の中でよく見られる格差社会についての風刺的な描写が多いんですが、それがまたやるせなさを感じます。
お金持ちや権力を持つ警察、それに歯向かう術もなく現実に打ちひしがれる低所得層といった構図に感情移入してしまいます。弱者が強者に立ち向かうシーンなどは、古今東西共感を生みますよね。
警察や弁護士のいい加減な対応なども、なかなかリアルな感じですが、そういったところが観ている側へ母親への同情を誘うので、より引き込まれていきます。
【どんでん返し(ネタバレ)】
異常なまでに息子を溺愛する母親が、執念で真犯人を見つけるために、ありとあらゆる手を尽くして最後にたどり着いたその答えに、思わず息を呑みます。そして、今まで点となっていたものが、そこで一気につながります。
そしてそこからラストシーンに向けての展開に、なんとも言えないやるせなさを感じ、しばし呆然としてしまうかもしれません。
特にトジュンが針箱を母親に渡すときのシーン。
「そうだ母さん、渡すものがあるんだ。」
と言ってスッと針箱を目の前に出すトジュン。キョトンとする母親。
「落としちゃダメじゃないか。」
そう言って、渡すときのトジュンの澄み切った目と動揺を隠せない母親の顔。
僕はドキッとして、鳥肌が立ちました。
そしてそこからエンディングの母親がバスで踊るシーンへと流れていくんですが、もうここは本当に見ものです。後は観てのお楽しみですね。
口コミ、レビュー
【母なる証明】
やはり韓国映画は面白い親子愛、ミステリー、サイコ…
じわじわと襲う悪夢がたまらないこの独特な生々しい雰囲気や斜め上の展開が好き
全てが描かれてるわけじゃないため、考察も楽しめる
もしかしたら息子は正常なんじゃないかと感じるけど
どうなのか…#1日1本オススメ映画 pic.twitter.com/QEmtuXSffW— ペンペン (@penpen_movie) February 26, 2020
この頃ウォンビンの人気絶頂の時。俳優としてのチャレンジに期待が膨らんだ。ポンジュノ監督だし、どんな映画になるのか興味があった。私は演技に興味があるのだが、韓国人の演技にはいつも驚かされた。終わり方に度肝を抜かれた。日本では観れない映画。#母なる証明 pic.twitter.com/pfeVusGCFG
— 吉家章人 (@akihitoyoshiie) March 1, 2020
映画紹介(どこで観れるのか?)
ゾクッとするようなサスペンスの醍醐味を味わってみてください。(2020年3月現在)
まとめ
韓国映画って以前は『冬のソナタ』なんかが日本でも大ブレイクしましたけど、今や世界的に見ても評価の高い映画がどんどん出てきていて、とうとうハリウッド映画に肩を並べるところまで来ていると言っても、言い過ぎじゃないのかもしれませんね。
特にポン・ジュノ監督は「パラサイト」で一気に世界の一流監督に名実ともに仲間入りです。今最も旬な映画監督と言ってもいいでしょう。
だから今回はそんなポン・ジュノ監督の過去の名作を紹介しました。
そしてこの「母なる証明」という十年前の作品からも、そんなポン監督の素晴らしい才能の片鱗がわかります。
ちょっと皮肉な話になっちゃいますが、コロナウィルスによる影響で自宅にいる方も多いと思いますので、この機会にいっぱい映画やドラマを観るというのも一つの楽しみ方ですね。
記事内の画像出典:U-NEXT公式サイト・パラサイト公式サイト