1990年代のイギリスを舞台に魔法使いの少年ハリー・ポッターの成長と、強大な闇の魔法使いヴォルデモート卿との戦いを描いた児童文学の世界的ベストセラー、それが「ハリー・ポッター」シリーズです。
2001年に映画化されると、さらに人気は加速し、日本での地位を不動のものとしました。
その映画第5作が2007年に公開された「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」です。しかし、ハリー・ポッターをめぐる物語も終盤に近く、少し複雑になってきました。
そこで「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」を中心に、あらすじや登場した人物、用語を簡単に解説します。
ハリー達の冒険に置いていかれないよう、一緒に復習してみませんか?
「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」のあらすじ
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原作では一冊で一年間の物語となっており、登場人物たちも成長していきます。
1作目「ハリー・ポッターと賢者の石」では11歳だったハリーも、5作目となる「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」では数々の困難を乗り越えた逞しい青年へと成長を遂げています。
そんな彼が事件に遭遇したのは、夏休みのことでした……。
発端
ヴォルデモートが復活し、表立って行動をしていないものの、ハリーを巡る状況は緊張を増していました。
そんな時、ハリーと従兄は突然現れた吸魂鬼に襲われてしまいます。
ハリーは魔法を使って窮地を脱しますが、代わりに近所のおばさんに魔法を使うところを目撃されてしまったのです。
しかし、近所に住むそのフィッグおばさんこそ、ダンブルドアに雇われたハリーの監視役。おばさんからのお咎めもなく、ハリーはその後不死鳥騎士団の本部へと身を寄せます。
魔法省による懲戒尋問
吸魂鬼の脅威から脱したと思ったハリーでしたが、次なる脅威は意外なところから現れます。
それは魔法省です。
ハリーを直接傷つけるような脅威ではありませんが、魔法に関する法律違反として、彼をホグワーツ魔法魔術学校から除籍させようとしていたのです。
それでもダンブルドアの機転とフィッグおばさんの証言のおかげで自己防衛のために魔法を使ったことが認められ、無罪となりました。
魔法省からホグワーツ魔法魔術学校への介入
魔法省はハリーを「嘘つきの少年」だと新聞に書き立てるなど、ヴォルデモートの復活を認めません。
また、ホグワーツが優秀な人材を集め、校長であるダンブルドアが私兵化するのでのではないかと疑っていました。
それらを防ぎ、ホグワーツの力を削いで監視するためにアンブリッジを教授として派遣し、干渉させます。
アンブリッジは授業の内容の干渉だけでなく、生徒たちにも禁止事項を次々と作り、公道を監視して制限するのでした。
授業内容の変更と、生徒の反抗
アンブリッジの行う授業は本を読ませるだけのもので、実践とは程遠いものでした。それだけでなく尋問官親衛隊を結成し、生徒自ら他の生徒たちを監視させることで、さらに締め付けを強めたのです。
しかも不死鳥の騎士団からヴォルデモートが活動を始めたとの知らせがハリー達に届きます。
そこで実戦経験のあるハリーを筆頭に、ダンブルドア軍団を生徒たちが結成し、防衛魔法の練習を始めるのでした。
その一方でハリーは、友人ロンの父親が襲撃される悪夢に悩まされていました。しかし、それはただの夢ではなく、ヴォルデモートとハリーがリンクしているために見た現実だったのです。
ダンブルドア軍団の瓦解とダンブルドアの失脚
ハリーとヴォルデモートの間には絆のようなものがあり、このままでは彼が危険なことが分かりました。
そこでダンブルドアはハリーへの閉心術の指導をスネイプに指示します。この閉心術によって、ヴォルデモートからの悪影響を防ぐことができるのです。
一方でダンブルドア軍団も実践的な魔法の訓練を行っていましたが、ついにアンブリッジによって発見されてしまいした。
しかし、ダンブルドアがすべての責任を負う形で生徒たちを庇い、失脚します。そのことでアンブリッジはホグワーツの校長となり、実質ともに実権を握ったのでした。
しかもアズカバンからは死喰い人が脱獄し、ヴォルデモートの勢力は増す一方です。
ヴォルデモートの脅威・ハリーの戦いと別れ
ハリーは、不死鳥の騎士団の重要な人物であるシリウスが拷問される悪夢を垣間見ます。それはヴォルデモートの意識をハリーが垣間見たためでした。
悪夢の成就を防ぎ、ヴォルデモートを倒すのに役立つ予言を得るため、ハリーたちは魔法省へと急行します。
魔法省で予言を見つけたハリーたちでしたが、死喰い人も同じように予言を狙っており、激しい戦いになります。
窮地に陥ったハリーたちを助けるため、不死鳥の騎士団が現れ、形勢は逆転したかに見えましたが、予言は破壊され、シリウスが命を落としました。
怒ったハリーは独断で死喰い人を追い、シリウスの仇をとるために相手を殺すよう、ヴォルデモートにそそのかされそうになります。
しかし、そこにダンブルドアが現れ、激しい戦いの末にヴォルデモートは撤退するのでした。
そして、ついに魔法省の大臣もヴォルデモートを目撃し、復活を認めてアンブリッジをホグワーツから引き上げさせ、ダンブルドアを校長に復帰させるのでした。
注目ポイント
大きな組織同士の対立など、人間同士の思惑や権力闘争にもスポットがあてられた「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」。
ヴォルデモートが本格的に復活を果たし、脅威を増す緊張感のあるストーリー展開には目を見張るものがあります。
しかし、僕が本当に注目してほしいのは、ハリーの心の動きです。
たとえば、ダンブルドアがハリーとヴォルデモートの絆の存在に気付き、あえてそっけなく冷たい態度をする場面などです。もちろん、これもハリーを思っての行動ですが、彼はとても落ち込んでしまうのです。
目を合わせることを避けたりと、小さな動作で色々と魅せてくれるのは、やっぱり役者さんたちの名演のおかげ!
原作では味わえない、映画ならではの部分にも注目してみてください。
「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」の登場人物
個性的な登場人物がたくさんいることは、「ハリー・ポッター」シリーズの大きな魅力のひとつです。
しかし、原作は全7巻。映画は全8作品ともなると、把握するのも大変です。
そこで「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」にて重要な役割を持つキーパーソンを紹介します。
ハリー・ポッター
両親の死後に引き取られた家庭で冷遇されていたため、自信がなく卑屈な態度すら見せていた少年は逞しく成長し、強いリーダーシップすら発揮するようになります。
しかし、「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」では思春期であること、そしてヴォルデモートとの繋がりによって精神的な不安定な部分も現れました。
一方で、多くの人が恐怖して名前を呼ぶことさえ忌避していたヴォルデモートを、名指しにして対峙する勇気をも兼ね備えてたのです。
肉体的にも精神的にも成長過程のハリー・ポッターは、まさしく魔法世界の命運をかけた戦いに身を投じることが予言されていた特別な存在なのです。
アルバス・ダンブルドア
作中最高の魔法使いとも名高いダンブルドアは、ホグワーツ魔法魔術学校の校長で普段は誰からも親しまれる、優しいお爺さんといった感じ。
しかし、その実力は不死鳥の騎士団のメンバーと互角に渡り合っていた死喰い人をたった一人で圧倒し、ヴォルデモートすら逃亡を余儀なくされる程のものです。
洞察力に秀でた人物でもあり、いち早くハリーとヴォルデモートとの繋がりについても察知し、閉心術の習得をスネイプに指示をするなど、指導者としても非凡な存在です。
シリウス・ブラック
不死鳥の騎士団のメンバーで、ハリーの父親とも親交がありました。また、ハリーの名付け親でもあります。
アズカバンに無実の罪で収監されていましたが、ハリーの危機を知り脱獄しました。
シリウスはハリーを実の息子のように想い大切にします。何度もハリーを引き取ることを提案し、ハリーにも父親のように慕われていました。
魔法省での戦いでは自らの危険を顧みず、ハリーを助けるために駆け付け、命を落とします。
ドローレス・アンブリッジ
魔法省に勤める官僚で、ホグワーツ魔法魔術学校に派遣されました。
ホグワーツの人材をダンブルドアに私兵化させないための措置でしたが、皮肉なことに彼女の存在が、ハリーたちにダンブルドア軍団結成のきっかけを与えることになります。
ヴォルデモート
彼を知る者は名前を呼ぶことさえ恐れ、ダンブルドアですらその実力を認めた闇の魔法使いがヴォルデモートです。
かつて赤ん坊だったハリーを殺害しようとして失敗し、肉体を失っていましたが、前作「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」にて肉体が復活し、今作から本格的に活動を開始しました。
複数の分霊箱を用意することで、ヴォルデモートは肉体を失いながらも復活が可能だったのです。
「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」にも登場した用語を解説
ハリーが活躍する魔法の世界では当たり前に使われている言葉も、僕たちにはなじみがありません。
そこで、ここからは「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」に登場した気になるキーワードを解説。
今作以降にも登場するので、知っておくともっと「ハリー・ポッター」シリーズを楽しめるはず!
不死鳥の騎士団
ダンブルドアがヴォルデモートに対抗するために作った組織です。
ハリーの殺害に失敗したヴォルデモートが肉体を失い、失踪したことで一度は解散しましたが、前作「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」での復活を受けて再結成されました。
主な活動内容はハリー自身と、その関係者保護。情報収集だけでなく、死喰い人との戦闘もこなす、実力が求められます。
そのため在籍している誰もが優秀な魔法使い。しかし、その熾烈な活動内容のため、戦死者もたくさんいるのです。
魔法省
魔法界で最も権力を持つのが魔法省であり、魔法大臣です。どれほどの権力かといえば、一国の首相と同じぐらいの権限を持っています。
ただし、僕たちの知っている官公庁と違い、権力の分立は行われておらず、司法や外交なども一手に引き受けています。
そのため権力や地位に固執する者も少なくありません。
吸魂鬼(きゅうこんき)/ディメンター
全身にマントをまとい、頭巾ですっぽりと顔を隠した大柄な人のような容姿で、滑るように移動します。
吸魂鬼が近くにいるだけで人間は活力を失いますが、恐ろしいのはそれだけではありません。人間の持つ幸せの感情を感知して、吸い取り、自らの糧にしているのです。
その恐ろしい能力から、アズカバンでは看守を務めていました。
分霊箱
自らの魂の断片を生物やなにかしらの物に隠す魔法のことです。
魂を分割して保管することで、それら全てが破壊されない限り、本来の肉体と魂が失われても死を免れることができます。
しかし、分霊箱を作成するためには生け贄が必要で、作中では最も邪悪な魔法として忌み嫌われ、存在すらほとんどの魔法使いが知りません。
死喰い人
ヴォルデモートに忠誠を誓った魔法使いたちの中でも、特に重要な人物の呼び名です。
前作「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」から活動を再開しました。
死喰い人は「闇の印」と呼ばれる印を刻んでおり、この印は死喰い人しか作り方を知らず、多くの人々に恐怖の象徴として知られています。
閉心術
相手の心をこじ開け、記憶や考えていることを読み取る開心術を防ぐためのもの。
ハリーはヴォルデモートからの干渉や彼を通じた周囲への影響を防ぐため、スネイプから伝授されました。
「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」は複雑で見ごたえのあるストーリーが魅力
「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」では、権力闘争など目に見える形での組織間のいさかいが物語をより複雑なものにしていました。
しかし、ちょっと視点を変えてみると、そのいさかいは「迫る脅威の本質に気付けない大人」と「抑圧されながらも批判するだけでなく行動によって状況を打破する若い力」という構図にも見えるのです。
公開から時間がたった「ハリー・ポッター」シリーズも、こんなふうにちょっと視点を変えて見直すと、見えるものが変わってくるかもしれませんね。